トピックス

法律トピックス 特許

知財訴訟におけるIT化の動向について

1.知財訴訟のIT化の現状

(1)ウェブ会議の活用

現行民事訴訟法においては、口頭弁論期日は公開の法廷で行うことが定められており、当事者又は訴訟代理人が裁判所に赴いて期日に出廷することになっている。一方、口頭弁論期日ではなく、当事者の主張及び証拠を整理し、訴訟の進行を協議する弁論準備手続については、コロナ禍の影響も受けて、知財訴訟においては2020年4月頃からTeamsのシステムを利用したウェブ会議が活発に利用されるようになった。厳密には、「音声の送受信により同時に通話することができる方法」によって弁論準備手続を行う際には、当事者の一方が裁判所に出廷しなければならない(現行民事訴訟法170項3項)ため、ウェブ会議を利用する際には、書面による準備手続(同175条)に付随するウェブ会議における協議という形式で行われている。

 

(2)民事裁判書類電子提出システム(mints)の運用

知財高裁、東京地裁及び大阪地裁の知財部に係属する事件については、本年6月以降、従前FAX送信によって裁判所に提出することが認められてきた書面(準備書面や書証の写し)を、オンラインで提出することができる「民事裁判書類電子提出システム」(通称:mints)の本格的な運用が始まった。弊所が担当する事件についても、徐々にmintsを通じて書面提出を行うものが増えつつある。知財訴訟においては、書面や証拠の分量が膨大になることが多く、書面提出の際にはキャリーケースに紙をいっぱいに詰めて持参する必要があったところ、mintsを介した書面提出の場合にはそのような事態を防ぐことができ、総じて使い勝手が良いと感じている。

 

(3)ビジネスコートの開設

本年10月、知的財産高等裁判所をはじめ、東京地方裁判所の商事部、倒産部及び知的財産権部が、知的財産高等裁判所・東京地方裁判所中目黒庁舎(ビジネスコート)に移転した。
コンセプトとしては、「選択と集中によりビジネス関連部署を集約した上で相互連携し、デジタル化による効率性を積極的に追求するとともに、専門性・国際性の一層の充実・強化を図り、利用者(ユーザー)の期待に応える新しい裁判所を実現」すること、web会議ブース等のIT設備が充実していることや、国際シンポジウムの開催などが挙げられている(202209concept-businesscourt.pdf (courts.go.jp))。双方の当事者に代理人がつくことがほとんどであり、オンラインでの手続に対応しやすいと考えられるビジネス関連訴訟について、ビジネスコートを拠点として、多種の事件に先駆けてIT化が進んでいくものと予想される。

 

2.令和4年改正民事訴訟法

今年成立した「民事訴訟法等の一部を改正する法律」によって、これまで裁判所に両当事者(又はその代理人)が出廷して行われてきた口頭弁論期日について、施行日である2024年5月25日までに、ウェブ会議によって行うことができるようになることが定められた。さらに、双方当事者がウェブ会議を用いて参加する場合でも、書面による準備手続という形をとることなく、裁判所で行うのと同じように、弁論準備手続として行うことができるようになっている。

また、現状では紙で提出する必要がある訴状や控訴状等についても、2026年5月25日までに、所定の方法による電子ファイルの提出によって行うことができるようになることが予定されている。

また、民事執行、民事保全、倒産事件、家事事件等に関するIT化についても、法制審議会の部会で今年から検討が始まっているということである。