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【速報(大合議判決)】特許侵害訴訟における損害賠償額の認定について、特許法102条2項による推定が一部覆滅された部分への同条3項の適用が認められた事例(知財高裁令和4年10月20日・令和2年(ネ)第10024号大合議判決(椅子式施療装置・椅子式マッサージ機事件))

1 はじめに

昨日(2022年10月20日)、知財高裁において、大合議判決がなされ、本日(2022年10月21日)知的財産高等裁判所HPに判決の要旨が掲載された(https://www.ip.courts.go.jp/vc-files/ip/2022/2n10024.pdf)。

 

2 本速報で取り上げる論点

論点は、論点①:特許法102条2項による推定が一部覆滅される場合であっても、当該推定覆滅部分について、同条3項が適用されるか、論点②:その適用が認められるとしてどのような場合に認められるかである。

 

3 判決

事案の概要は省略するが、本判決の要旨によると、下記のとおりである。

 

被控訴人は、102条2項の推定覆滅事由として、①特許発明が被告製品1の部分にのみ実施されていること、②市場における競合品の存在、③市場の非同一性、④被控訴人の営業努力(ブランド力、宣伝広告)、⑤被告製品1の性能(機能、デザイン等)が推定覆滅事由に該当すると主張したところ、裁判所は、①と③について、覆滅事由に該当すると判断した。

 

裁判所は、「特許法102条2項による推定が一部覆滅される場合であっても、当該推定覆滅部分について、特許権者が実施許諾をすることができたと認められるときは、同条3項の適用が認められると解すべきである」と判断し、102条2項による推定覆滅部分について、3項の適用がなされる場合がある旨判断した(論点①)。

 

そして、論点②について、③の市場の非同一性を理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分については、実施許諾をすることができたものと認められるとして、3項の適用が認められると判断した。他方、①の侵害品の部分のみに実施されていることを理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分については、被告製品1に対して本件特許Cに係る発明が寄与していないことを理由に本件推定が覆滅されているものであり、このような本件特許Cに係る発明が寄与していない部分について、控訴人が実施許諾をすることができたものと認められないとして、3項の適用を認めなかった。

 

4 まとめ

令和元年特許法改正によって、特許法102条1項が改正され、販売数量の減少による逸失利益(同項1号)と、ライセンス機会の喪失による逸失利益(同項2号)の合計額を権利者が受けた損害の額とすることができる旨規定された。ただ、特許法102条2項による推定の覆滅部分に対して同条3項が適用されるかどうかは争いがあり、特許庁による解説書では、2項の推定覆滅部分についても、ライセンス機会の喪失が認められるのであれば、新1項と同様の認定がなされるとの解釈が示されていた。

本大合議判決は、推定覆滅部分に対して3項が適用される場合があると明確に判断し、当該事案を前提とした上での判断であると思われるが、102条2項の推定覆滅事由のうち、「侵害品の部分のみに実施されていることを理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分」については、3項の適用を認めず、「市場の非同一性を理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分」については、3項の適用を認めた。

推定覆滅部分について3項が適用される場面についての判断については、特許法102条1項2号における解釈にも影響を与えるであろう。

 

※本記事は速報であり、誤記や誤り等がある可能性があるため、その点ご容赦いただきたい。

※この記事は一般的な情報、執筆者個人の見解等の提供を目的とするものであり、創英国際特許法律事務所としての法的アドバイス又は公式見解ではありません。

文責:弁護士 河合哲志弁護士佐藤慧太

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