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特許

間接侵害について

1 はじめに

最近、知的財産権法文集を令和4年1月1日施行版に買い替えた。買い替える前の知的財産権法文集(令和3年4月1日施行版)の特許法のページを開いてみると、特に特許法100条~102条辺りの条項について、多く参照した形跡が残っていた。そこで、ここ最近の業務内容を振り返ってみると、特許法のうち、充足無効論などはもちろんのこと、差止請求(100条)や間接侵害(101条)、損害論(102条)を比較的多く検討してきたように思える。

これらのうち、間接侵害(101条)について、まず、概要を説明したうえで、間接侵害について振り返ったときに意外と頻繁に検討したと思った論点について、裁判例を交えながら説明することとする。

 

2 本論

(1)概要

ア 間接侵害とは

特許法101条は、以下のとおり規定されている。

「(侵害とみなす行為)

第101条 次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。

一 特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

二 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

三 ・・・以下省略(4号と5号は、特許が方法の発明についてされている場合の1号、2号に対応する規定である。紙幅の関係上、割愛させていただく。)」

間接侵害は、直接侵害を誘発する危険の高い一定の行為を、侵害とみなす行為として規定したものである。

ここで、法律用語としての「みなす」とは、「本来異なるものを法令上一定の法律関係につき同一なものとして認定してしまうこと。当事者間の取決めや反証を許さず、一定の法律関係に関する限りは絶対的に同一なものとして扱う点で、『推定する』とは異なる」(金子宏ほか編『法律学小辞典(第3版)』(有斐閣、1999年)1205頁以下)とされている。

すなわち、特許法101条各号のいずれかに該当する行為は、特許権を侵害する行為と同一なものとして認定される行為となる。

 

イ 間接侵害者に対して特許権者がなし得ること

特許権者は、特許権を侵害する者に対して、差止請求権(特許法100条)や損害賠償請求権(民法709条)等を有している。そして、特許法101条各号のいずれかに該当する行為(間接侵害行為)は、特許侵害行為と同一なものとして認定されるので、特許権者は、特許法101条各号のいずれかに該当する行為を行う者に対し、間接侵害の差止請求や損害賠償請求等をすることが可能となる。

 

なお、特許法には、特許権侵害の損害賠償請求について、損害の額の推定規定が定められているが(102条)、間接侵害においても、損害の額の推定規定の適用の対象となると解される。

例えば、特許法102条1項では、柱書において、「その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは」と規定されている。間接侵害は、特許侵害行為と同一なものとして認定されるので、間接侵害品(=例えば101条1号であれば、「その物の生産にのみ用いる物」)は、「侵害の行為を組成した物」に該当する。そのため、被疑侵害者が間接侵害品を譲渡した場合には、102項1項の推定規定の適用を受けることとなる。

 

(2)意外と頻繁に検討した論点

ア はじめに

間接侵害には、101条1号4号の「にのみ」の解釈や、同2号5号の「課題の解決に不可欠なもの」の解釈、直接侵害の存在の要否等、様々な論点が存在するが、意外と、「その物の生産」(101条1号、2号)、「その方法の使用」(101条4号、5号)の要件の該当性を検討した場面が多い印象を受けた[1]

例えば、国際取引において部品を海外に輸出した場合に、部品を製造する行為や輸出する行為が間接侵害に該当するかどうかといった際に、検討されるべき要件である。

この要件につき、101条1号を例示として説明する。

「特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」

①特許が物の発明についてされている場合この条項を便宜のために分けると以下のようになる。

②業として

③その物の「生産」にのみ用いる物(ここで使われる「生産」を、以下、「生産Ⓐ」という。)

④その物の生産「にのみ」用いる物

⑤生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為(ここで使われる「生産」を、以下、「生産Ⓑ」という。)

今回説明する「生産」とは、③の要件の「生産Ⓐ」である。

 

イ 裁判例

この点について判示した裁判例があるので、紹介する(東京地判平成19年2月27日判タ1253号241頁、多関節搬送装置事件)。ちなみにこの裁判例は、特許判例百選(第5版)の13事件でもある。(なお、下線及びⒶとⒷの字は、筆者が追記した。)

「ウ 未完成イ号物件のうち海外輸出分について

特許法101条は,特許権の効力の不当な拡張とならない範囲でその実効性を確保するという観点から,特許権侵害とする対象を,それが生産Ⓑ,譲渡される等の場合には当該特許発明の侵害行為(実施行為)を誘発する蓋然性が極めて高い物の生産Ⓐ,譲渡等に限定して拡張する趣旨の規定であると解される。そうすると,『その物の生産Ⓐにのみ使用する物』(1号)という要件が予定する『生産Ⓐ』は,日本国内における生産Ⓐを意味するものと解釈すべきである。外国におけるイ号物件の生産Ⓐに使用される物を日本国内で生産Ⓑする行為についてまで特許権の効力を拡張する場合には,日本の特許権者が,属地主義の原則から,本来当該特許権によっておよそ享受し得ないはずの,外国での実施による市場機会の獲得という利益まで享受し得ることになり,不当に当該特許権の効力を拡張することになるというべきである。」

ウ 裁判例の説明

条文上、「生産」という若干意味の異なる2つの用語が出てくるため、多少説明に窮するが、解説することにする。

例えば、特許法101条1号における「その物の生産にのみ用いる物」の「生産Ⓐ」とは、物の発明において、部品同士を組み合わせて、当該発明における実施品に変化させる行為である。

本裁判例は、外国において組み立て行為(生産Ⓐの行為)が予定されている場合に、日本だと間接侵害品に該当し得る部品を製造し(生産Ⓑを行い)、外国に輸出し、外国で組み立てて完成品を製造する行為(生産Ⓐの行為)が「その物の『生産Ⓐ』にのみ用いる物」における「生産Ⓐ」に該当するかどうかという点が論点となった。

結論としては、「生産Ⓐ」は、日本国内における生産Ⓐを意味するものと解釈すべきであり、生産Ⓐが外国でなされる場合には、その生産Ⓐに使用される物については、間接侵害品に該当しないと判示した。すなわち、上記アの例のように、単なる部品のみを日本で製造し、部品を輸出して、外国において生産Ⓐが行われて完成品が作り出されるのであれば、生産Ⓐに使用される物(部品)が完成品にとっていわゆる「のみ品」であっても、いわゆる「課題解決に不可欠な品」であっても、間接侵害は成立しないこととなる。

そのため、間接侵害の疑いがあって「にのみ」の要件や「課題解決に不可欠」の要件などを先に検討する前に、「生産Ⓐ」が日本国内で行われているかどうかを先に検討しておくことも、効率的な場合もあるのではないかと思われる。

(本稿は、季刊創英VOICE2022年4月号に掲載された記事と同一の記事です。)

以上

[1] 直接侵害の存在の要否にも関わってくる論点でもあると思われる。